建築家の業務は、工事に掛かるまでに、お客様の要望を具体的なかたちにしていく「設計」と、
工事が技術的に問題なく行われているのかチェックし、また、図面だけでは表現できていないものを施工者と確認していく「工事監理」があります。

「設計」をする際の条件に、ふたつとして同じものはありません。

ほとんどの場合、建て主は、建築に関して素人です。近頃は、建築のデザインをよく勉強されている方がたくさんいらっしゃいます。また、建物の構造や断熱性能、材料についてとても詳しい方もおられます。ただし、それは建築のごく一部の情報で、それぞれの特性を比較検討し、その特性を体系的に理解されていない場合がほとんどです。

建築家は、建て主の要望を、

• 敷地環境の特性
• 法的な制限
• 構造の特性
• コストパフォーマンス
• 素材の特性
• 熱環境の特性
• デザインとの関係性

などの条件を整理し、要望に優先順位を見つけながら、最適で合理的な答えを、建て主と一緒に見つけていく作業が「設計」という仕事です。

工務店やハウスメーカーは、「設計」と同時に「施工」を請け負います。「設計」と「施工」を同じ会社が行うと、建て主は、客観的な判断が大変難しいと言わざるを得ません。
それは、専門的事象を「通訳」してくれる人がいないのですから。

「設計」と「施工」を同じ会社が行う工務店やハウスメーカーも、もちろん誠意を持って仕事をしてくれるでしょう。ですが、建て主は、材料や構造の特性とコストパフォーマンスを、選択肢を広げて、それぞれを比較しながら体系的に知ることはできず、結局、担当の営業マンや、その会社を信頼するというかたちでの決断になることがほとんどだと思います。

建築家は、「工事監理」の仕事では、工事が、設計図書通り問題なく出来ているのかどうかを、建て主の代わりに、専門家として確認します。

工事監理者の任命は、建築基準法で決められた役割ですので、工務店やハウスメーカーで建てる場合にも必ず任命しますが、同じ会社の人間が施工状況を監理することとなり、正常なチェック機能は働かないと言わざるを得ません。

あくまでもその会社の良心に委ねるしかないのです。また、工務店やハウスメーカーは、トラブルを避けるために、設計の自由度を極端に制限し、利益を確保するために使用可能な素材・材料の自由度も狭く限られます。ですから、客観的にみて、コストパフォーマンスは低いのです。

一方、建築家は建て主に代わって専門家として、工事監理を行います。

工事に対する専門的なチェック機能が働くだけでなく、工事のミスや手抜きを未然に防ぐことが可能となります。また、建て主の様々な疑問に対して、わかりやすく説明をします。